川内の原発差し止め仮処分についてその1

原発の再稼働の可否を巡って、住民が提訴していた仮処分について、高浜原発についての差し止めを認めた福井地裁4月15日決定と川内原発の差し止めを認めない鹿児島地裁4月22日決定で、正反対の結論となりました。
まずは、新聞やネットで、双方の決定(要旨)をご覧下さい。
1 基準地震動問題その1・・過去の4つの基準超えについて
  鹿児島地裁は「ウ 日本の原子力発電所においては、過去10年間でその当時の基準地震動を超過した地震が四つ(5ケース)発生していることが認められるが、新規制基準においては、これらの基準地震動超過地震が生じた原因とされる地域的な特性を基準地震動の策定に当たって考慮できるようにその手法が高度化されているから、これらの基準地震動超過地震の存在が新規制基準の不合理性を直ちに基礎付けるものではない。」
としますが、福井地裁は「基準地震動は原発に到来することが想定できる最大の地震動であり、基準地震動を適切に策定することは、原発の耐震安全性確保の基礎であり、基準地震動を超える地震はあってはならないはずである。しかし、(中略)本件原発の地震想定が基本的には上記4つの原発におけるのと同様、過去における地震の記録と周辺の活断層の調査分析という手法に基づいてなされ、活断層の評価方法にも大きな違いがないにもかかわらず債務者の本件原発の地震想定だけが信頼に値するという根拠は見い出せない。」としていますが、はるかに説得的です。
 問題にすべきは、何で短期間に多数の基準超過地震があった原因の究明です。その原因を踏まえて基準を定め直すというのが正しい回答です。「基準地震動超過地震が生じた原因とされる地域的な特性を基準地震動の策定に当たって考慮できるようにその手法が高度化されているから」では答えになっていません。
そもそも、基準地震動は、過去にあった地震とか、土地の状態(断層に位置等)から定めるものですが、それらが判っているのは地表面に現れた断層か,せいぜい数百メートルまでの断層だけで,数キロもの地下に潜む断層を発見することはできません。しかも、電力会社は過去に断層の過小評価をしてきました(詳細略)。
 ですから、少なくとも、そのような現実の状況下で、平均的な地震動による基準地震動(耐震設計の基本となる数値)を前提とした耐震設計しかされていないことは甘すぎです(入倉・三宅式)。この基準自体が間違っているのではなく、これ(平均値)を基準にすることが間違いなのです(詳しくは「原発地震動想定の問題点」内山成樹 (著)、七つ森書館)参照

加納 雄二 について

大阪の弁護士です。債務整理、離婚、相続、労働事件等幅広く取り組んでます。 加納雄二のホームページ
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