2 基準地震動問題その2 福島事故後の対応について
福井地裁決定は、「基準地震動である700ガル未満の地震について」として、「本件原発の運転開始時の基準地震動は370ガルであったところ、安全余裕があるとの理由で根本的な耐震補強工事がなされることがないまま、550ガルに引き上げられ、更に新規制基準の実施を機に700ガルにまで引き上げられた。原発の耐震安全性確保の基礎となるべき基準地震動の数値だけを引き上げるという対応は社会的に許容できることではないし、債務者のいう安全設計思想と相容れないものと思われる。」としている。
同様に川内原発の基準地震動を540ガルから620ガルへと引き上げたが、何の補強工事もされていない。鹿児島地裁決定は、「本件原子炉施設の耐震設計においては、その際に用いられる評価基準値が実際に建物等が壊れる限界値との関係で十分な余裕が確保されている上、実際の設計段階でも評価基準値に対して上限とならないように工学的な判断に基づく余裕が確保されており、さらには放射線に対する遮へいの要求等から建物の壁がより厚く設計されるなど、耐震以外の要求からも耐震安全上の余裕が付加されていることなどが認められる。これらの耐震安全上の余裕があることについては、原子力安全基盤機構が実施した耐震実証実験の結果やストレステストの結果等からも裏付けられている」とするが余裕があれば良いというものでは無い。これはアエラの4月20日号で内田樹さんが「でもしあなたが買った机が購入時点では「重さ370キロまで耐えられます」という仕様だったのが、工業規格が「700キロの負荷に耐えられないと机とは言わない」と変わったら、「実は700キロまでの負荷に耐えられるくらいに丈夫だ」とが言い出したら「嘘つけ」と思うだろう。と指摘している通りである。基準地震動が変わったら、安全余裕をそれに比例して引き上げるが当然だ。
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