福島事故、吉田調書の報道を朝日新聞は何故謝罪?

記事の出た日にたまたま対立する某新聞の記者が私の事務所に来てましたので、何で吉田調書まで慰安婦問題報道と同列に謝罪するの?と聞ききました。私と同意見でとのことですが、「慰安婦問題の批判のぼかしを狙ってる」とのお答えでした。しかし、ぼけたのは、吉田調書や他の調書からの教訓を論点とすべきなのに、誤報かどうかのみが論点になって、本来の論点の議論がなされていないことでしょう。
 確かに、朝日のスクープの「命令違反」とのタイトルがそのまま流れて海外でも報道され、日本の信用失墜に繋がったことは事実です。しかし、慰安婦問題のように、昔の吉田清(別の吉田)の虚嘘証言の放置、挺身隊との混同、と言った基礎事実の誤りを長期間認めの放置したのとは異なります。同列に問題になるようなことでは無いでしょう。
そして、吉田調書と同時に公表された他の人の調書も含めて、原発事故の初期対応の問題点を吟味すべきでしょう。この福島第2原発への避難を巡るドタバタや、例の「全員撤退」を巡る官邸と東電のドタバタも出てましたよね。後者も伝言ゲーム上のミスでしょうか?原発事故は重大、想定外の事態が次々と生じます。適切な対応なんてできる筈が無いでしょう。
それと、例えば、この吉田調書にある第2への避難の時に、第2の増田所長は、避難者を第2原発敷地内に入れなかったことは評価されるべきです。第1からの避難者には冷たいと言われたそうですが、第2でも必死の事故対応をしていたのです(吉田調書の避難のドタバタに関して、この事実すら紹介されていません)。で、第2では、外部電源4つのうち、1つのみ残ったのを、約800メートルものケーブルを伸ばして建屋に人海戦術で繋ぐ。冷却水が無いので、建築時(30年前の)ホースを自転車のチューブで補強して近所の川から取水する(第1で、弁を解放するために車のバッテリーを集めて繋いだような、アナログ、アナクロな行為)。それでやっと、2時間後にベントするとの事態が回避できたのですね。それでも、第2では、冷却用に「4000トン」の氷を要求したら、4000キロの氷が届いたとか、現場を把握していない本部から通常電源を止めて良いかと言われたとか。
 第1の吉田氏、第2の増田氏のようなたまたま優秀な指揮官(所長)がいたことも最悪のシナリをを回避できた大きな要因でしょう。無能な所長だったら、と思うとぞっとしますが。そもそも、人的要素に頼るようではいけないと思いますが。
今日14日の朝日の社説では、吉田調書を引用して、川内再稼働について批判的に論じてます(トーンは弱い)。吉田調書や、その他の人の調書を含めて論ずべきは再稼働の是非でしょう。論点をぼかさせるミスを犯した朝日新聞の罪は大きいと思います。
長年朝日新聞を購読してきましたが、アサヒ芸能にでも乗り換えようかしら??

加納 雄二 について

大阪の弁護士です。債務整理、離婚、相続、労働事件等幅広く取り組んでます。 加納雄二のホームページ
カテゴリー: 原発問題 パーマリンク